月物語 ~黒き者たちの宴~
彼女こそが前王、呂 雉雀(りょ ちじゃく)である。
衣ばかりが煌びやかで、違和感を覚えた。
段の下で男は片膝をついて、女に何かを差し出した。
女はそれを持って、段を一段一段登ってくる。
近づいてわかったが、雉雀は大分年をとっていた。
年と衣の色が合っていない。
違和感を感じたのはそのためである。
礼の前で、手に持っていたものを掲げて一礼する。
―何て優美な扇。
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