月物語 ~黒き者たちの宴~
「とっ取り敢えず、我々の拝命の儀は行っていただかないと…。」
如何にも、気の弱そうな高官が口を開いた。
どうやってここまで登って来たのか。
平当が鋭い視線を投げた。
発言した男は黙って小さくなる。
「で、では、我々の拝命の儀も行わせてもらいます。」
「劉向殿!」
ここぞとばかりに式を進めようとする劉向に、平当が低く怒鳴った。
礼は構わず渡された物を読んだ。
最も大きいはずの自分の席が、最も小さく感じられた。
さすがの平当も、これには黙るしかなかった。
不思議なことに、こちらの文字が読める。
王の力なのだろう。
通常、王が代われば官僚たちの役職も代わるが、礼には人脈がないのでそのまま続行することになった。