月物語 ~黒き者たちの宴~



「疲れたー。」



礼は寝台に飛び込んだ。



夜になると、大々的な宴が催された。



王が誕生したのだから当然である。



先ほどの高官たちを始め、赤国各州の刺史(しし:州長)たちが集まっていた。



王は一人一人に謁見の期を与え、杯を交わすのが慣わしだ。



一人、謎の人物がいた。



――太僕長官 楊震――



その人である。



式を欠席し、さらに宴まで欠席するとはどんな不逞の者だろう。



さすが死にかけた国だ。



勉強しなければならない。



宮内の事情も。



二人の人物の顔が浮かんだ。



平当と、初めて来たときに品定めした女の顔だ。



早く自分の国にしよう、そう心に決めて眠りについた。



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