雨のち晴





「ついてる、ほら」





諒司先輩は、自分のナフキンで、


あたしの口元をすっと拭った。


ステーキのタレが付いていたらしく、


ナフキンが茶色く染まってしまって。





「ごめんなさい、汚くしちゃって」




「可愛いんだって、そういうのも」





普通に、言うもんだから。


恥ずかしくなって、顔を


赤らめる。


何でそういうこと、


言っちゃうかなぁ。





「あ、ちょっとお手洗い行ってきます」





「あ、あたしも」





料理をほとんど食べ終えた時。


突然恵衣と麗華が立ち上がって、


トイレに行ってしまった。






「朱里ちゃん、あのさ」






深刻そうな面持ちの真太先輩。






「は、はい…?」





「恵衣、もらっていいかな?」





「も、もらってって…、え、あのっ…」





もらっていいかなってことは、


つまり、その。





「俺、好きなんだ、恵衣のこと」





いつになく真面目な真太先輩。


あたしは、嬉しくなって。





「はい!もちろんです!もらってください!」





「勇気出たわ、ありがとさん!」





屈託のない笑顔が、


すごく眩しくて。


あたしの頭の中ではもう、


真太先輩と、恵衣が隣を


並んでることしか想像出来なくて。






「お前は?健」





諒司先輩がふいに、言う。


健先輩は少し笑って。






「麗華にはもう伝えてある」





冷静に、そう言うから。


あたしたちは普通に、


大きな声で叫んでしまった。






< 168 / 281 >

この作品をシェア

pagetop