雨のち晴
「は、嘘?」
「いつだよ!お前、俺ら知らねえぞ!」
あたしは2人の言葉に、
うんうんと頷くしか出来なくて。
だって、言葉が出ないし、
第一そんな素振り見てないし。
「別にフラれたわけじゃないから、言わなくてもいいと思って。悪かったな」
フラれたわけじゃ、ないの?
え、じゃあ、付き合って…?
「てことは、何。付き合ってんの?」
「いや、今は自分のこと考えられないからって。だから待つことにしてんだ」
何か、麗華がそう言ってるとこが、
想像出来てしまった。
きっと、あたしや恵衣を心配して、
自分のことを後回しにしてるんだ。
麗華らしいけど、
本当ばかなんだから。
でもそういえば、麗華。
健先輩のこと、健って、
呼んでるっけ?
もう、何か。
上手く行くんじゃない、全部。
「朱里、ちょっと」
諒司先輩があたしの腕を引き。
いきなり抱きしめる。
「え、何っ?ちょっ…諒司先輩!」
「今から目つぶって、10数えて。数え終わったら、目開けていいから」
意味の分からないまま、
あたしは諒司先輩の胸の中で
目をつぶる。
数えていくたびに、
胸が高鳴る。
何?何で数えなきゃ、いけないの?
最後の1になった時。
すっと諒司先輩が立ち上がった。
「せーのっ」
目を開けると同時に、
そんな声が聞こえてきて。
「はっぴばーすでぃ、朱里」
あたしに向けた、
誕生日を祝う、歌。
12月29日が誕生日なあたし。
まだあと5日も先なのに。
「嘘ぉ…」
歌い終えると、
お店中のお客さんが
拍手をしてくれた。
あたしは思わず、周りに
お礼をする。
だって、だって。
予想もしてなかったから。
嬉しくて、驚いて。
涙が止まんない。