雨のち晴





「ちょっと、反則だよぉ~」




「成功~っ!」




「朱里、おめでと」




喜んでる恵衣と麗華。


2人の顔が、涙で霞んでる。





「まだ先だけど、会えるか分かんないしさ!」




「ま、当日は諒司に譲ってやったんだけどな」





真太先輩も健先輩も、


そう言って手を叩いてくれる。


本当、居心地がいいこの場所。


あたしが笑っていられる場所。





「朱里」




「諒司、先輩」




隣で立っていた諒司先輩は、


おいでと両手を広げる。


立ったまま、あたしは


その腕の中に飛び込んだ。


包まれる腕が温かくて、


心地いい。





「嬉しい?」




「嬉しいよ、すっごく」




「可愛いな、朱里」




耳元で囁かれる諒司先輩の声が、


やけにくすぐったい。





「可愛すぎて、食べたい」





「もう、何言ってんの」





「キス、していい?」





どさくさに紛れて、


そんなことを言うもんだから。





「ばかばか、もう知らないっ」





あたしはするり、と。


諒司先輩の腕から抜けてやった。


ごめんて、と焦る彼を横目に。


火の付いたローソクを、


一吹きで吹き消した。


座り直すと、店員が来て、


ケーキを切ってくれた。


あと、これは店からのサービスです、と。


あたしだけに、手作りトリュフを3つ


用意してくれた。





「はい、これ」




「あたしも!」





恵衣と麗華は、


それぞれプレゼントをくれた。





「これは、俺と健と裕大から」





真太先輩から手渡された、


綺麗に包まれた包み紙。





「みんな、ありがとぉ…」




「俺は当日にあげるから」





隣でこそっと囁く諒司先輩に、


うんと頷く。


本当、もう。


今日は最高の日だ。





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