雨のち晴






12月28日。


冬休みに入ってから、


年賀状ばかり書いてて


外に一歩も出ていない。


みんな年末なこともあって、


外出出来ないし。


実際あたしが出来ないから、


誰にも会えなくて。


もうすぐ29日になる。


あと5分。


あー、もう18歳になるんだ。


去年は、何を考えてたかなって。


記憶を辿って、すぐに思い出す。


12月29日は。


あたしの誕生日でもあるけど、


里菜ちゃんの誕生日でもある。


偶然すぎて、知った時は


言葉も出なかったけど。


去年は、確か。


携帯を握りしめて、離せなくて。


0時ジャストに電話が鳴らないかなって。


過ぎてもいいから、来ないかなって。


そんなことを願ってたら、


いつの間にか寝てて。


急いで携帯を確認すると、


0時13分に、十夜からの


おめでとうメールが来てたっけ。






「今年はどうかなぁ…」





去年と同じように、


携帯を見つめて、じっと待つ。


来るわけないのに、


じっと、待つあたし。


自分でも自分に呆れるよ。


来るわけ、ないじゃんって。


壁にかかった時計が、


0時を知らせる音を鳴らした時。


同時に画面が光って。


来るわけないと思った、


電話が鳴って。


ディスプレイには、


諒司先輩じゃなくて。


十夜の名前があって。





「え、どうしよう…」





さっき、0時に電話するって


諒司先輩言ってたのに。


え、見間違えじゃないよね?


本当に、十夜だよね?





「もしも…し」






結構なバイブ音を聞いて、


もう切れるんじゃないかって。


そんな時に、電話に出たあたし。


十夜の第一声は。





『遅ぇって、出るの』





そんな一言。


久々に話したっていうのに。


告白までしたっていうのに。


何も変わらない、十夜。






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