雨のち晴





「ご、ごめんっ」





『何してた?』





「年賀状書いてた。今年書くの遅くて」





『俺も。面倒だよな、年賀状って』





同じことしてたんだ、って。


そんなことを考えて、


少し嬉しくなって。






「面倒だね、うん」





『去年、お前俺に年賀状手渡して来たの、覚えてる?』





そう言われて、あっと思い出す。


そうだった、確か。


十夜に送ろうと時間をかけて、


せっかく作ったのに。


住所を聞くのを忘れてて。


わざわざメールで聞くのも、


送りますっていってるようで、


聞きづらくて。


結局学校で、手渡したんだっけ。






「あ、そんなこともあったね」





『まじであれは恥ずかしかったから。今年はするなよ』





「やれってフリでしょ?」





『ばか、違ぇよ』





くすくす。


笑い合うあたしたち。


何だろう。


やっぱり、違う。


ときめきが、半端ない。


もう、苦しくなってる。


十夜に、会いたくなってる。






『今年は、あけおめ電話でいいんじゃね?』





「あけおめ電話って。初めて聞いたよ」




『初めて言ったし』






ぶっきらぼうで。





「いいよ、あけおめ電話。初めてだけど、する?」





『しょうがねえ、してやるよ。楽しみにしとけ』





だけど、すっごく優しくて。





「うん…楽しみにしてる」





『誕生日おめでとう、朱里』





ふいな、言葉が。






「ありがとう」





胸にくる。


突き抜ける、感覚。


もう、胸を突き破って、


穴が塞がらない。







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