雨のち晴
「今日は俺の行きたい所にした」
「先輩の行きたい所?」
「そ。行きたいけど、なかなか行けない場所」
だんだん人とすれ違うことが
多くなってきて。
長い長い階段を上がると。
「到着しました」
大きな看板が立っていて。
「水族、館…」
「ごめんね。俺の行きたかった所で」
そこは大人気の水族館で、
水族館の中でもベスト3に入る
くらいの大きな規模。
あたしも行きたくて、
だけどなかなか行けなかった場所。
「すっごい嬉しい!」
あたしは、嬉しくてウキウキしちゃって。
「水族館~っ!」
思わず、諒司先輩を置いて
1人走って中に向かう。
「先輩、早く!中、入ろ!」
「んな慌てんなって」
諒司先輩も、あたしに合わせる
ように、駆け足で来てくれる。
入場券を2人分買って、
中に入る。
「うっわぁ…」
入った瞬間に、口が開く。
水のトンネルをくぐる。
360度、魚でいっぱい。
サメもいるし、エイもいる。
小魚もたくさん。
「やべえな、ここ」
「うん…綺麗」
自然と2人、手を繋ぐ。
目には魚たちしか映ってなくて。
綺麗で、綺麗で。
来てよかったと思った。
「ペンギン!」
「朱里、並べよ!写メ撮るから」
あたしはペンギンの群れの
隣に立つと、ピースでポーズをとる。
後で送ってもらおうっと。
そんなこんなで、
いつの間にか時間が経って。
あっという間に、
館内を1周してしまった。