雨のち晴







「恵衣、飲み物用意するから」





「2人とも、先に部屋行ってて」






あたしと麗華は、


言われるままに階段を上り


恵衣の部屋に入った。


すぐに恵衣も上がってきて、


飲み物とお菓子を出してくれた。






「いただきます」





そう言って、お菓子に手を付ける。


2人ともやけに静かで、


不安が募る。






「ね、どうしたの、2人とも。話って…?」





自分から聞くつもりはなかったのに、


どうしても気になって


自ら問いかける。


すると、恵衣は麗華と


視線を交えると、


手に持っていた飲み物を


一気に飲み干して。







「あのね!」





突然大きな声を出して。






「うるさい、恵衣」





「ごめん」





隣の麗華に怒られた。






「あのね、あたし、見ちゃったの」





「見ちゃった…って、何を?」





尋ね返すと、


恵衣は言いにくそうに


顔を歪めて。






「里菜ちゃんの、浮気、現場」





そんなことを口にした。


あたしは言葉が出なくて、


言葉の意味を考えるだけで


精一杯だった。







「里菜ちゃんって…」





「藤田の彼女の、里菜ちゃん」






里菜ちゃんが浮気。


ということは、


十夜を裏切ってるってこと?






「一昨日の夜、コンビニに行ったのね。中に入ろうとしたら、外で抱き合ってる人がいて。よく見たら、里菜ちゃんだったの」





「キスまで、してたんだって」





「キス…、里菜ちゃんが、浮気…」






頭が上手く回らない。


どうして里菜ちゃんが。


何のために浮気なんか。






「しかもね、男の人3人くらいいて。もうあたし、どうしたらいいか分かんなくてっ…」






「恵衣、あんたが取り乱してどうするのよ」






恵衣は、目に涙を浮かべた。


泣きじゃくりながら。





「あたし藤田のこと、すごく好きだし。だからこそ、腹が立つっていうか…。何で、浮気なんか…」





そう言ってくれた。


十夜が2人を大事に思ってるのと


同じように、


2人も十夜を大事に思ってる。


それが、あたしはとても嬉しかった。






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