万華鏡


丁度そこへ宮下さんが戻って来た。

「どう?あった?」

「それが…。」

またベソをかき出した彼女を見ていると、資料がなかったことが容易に想像できた。

「一緒に探すから…。」

資料室の中、机の回り、キャビネの中など、考えられそうなところは全部見たけど見付からなかった。

パソコンの前に座って途方に暮れた。

はああー、どうしよ。とりあえず、明日課長に報告して…。

何気なく足元に目を遣ると、パソコン机と壁の間に何かが引っ掛かってる。

ファイル…?

机の下に潜ってそれを引っ張り出してみると、彼女が入力した筈の資料が挟まっていた。

「あった!!」

あー良かった。ほっと胸を撫で下ろした。それまでずっと首がうなだれていた宮下さんも、パッと笑顔になった。

時計を見ると8時を過ぎていた。




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