万華鏡


駅前は結構賑やかで、大型のショッピングセンター、カルチャースクールやオフィスなどが入った大きなビル、高層マンションなどが建ち並んでいる。

タクシー乗り場やバス停を通り越し、大通りに沿って歩いていくと道が二手に別れていた。

そこで地図を確認して右へ曲がった。

…のだけど。

道を一本どこかで間違えたのかと思うほど静かで、民家や個人商店が軒を連ね、大通りの喧騒は全くない。

駅から離れて行くにつれ、田んぼや畑が多くなってきた。

降りた駅から出ているローカル線の電車が一両、ガチャガチャと音を鳴らしながら走って行く。

のんびりとした静かな街だった。

時折、平屋建ての民家の前でお年寄りがベンチに座り、ゆっくりとした口調で談笑している。

どのくらい歩いただろうか。今、自分がいる辺りを地図で確認したけれど…。

あれ?ここはどこだ?

確かさっきはここをこう行ったから、…ん?

立ち止まって地図を回転させながら悩んでいると…。





< 53 / 108 >

この作品をシェア

pagetop