万華鏡


「どうしたの?迷子?」

と声をかけられた。

背の高い細身の体つきでキャップを目深に被っているせいで顔はよくわからない。

「え…いや、迷子というわけでは…。」

こういう時でも意地っ張りは健在で、はっきり迷子と言わない…というか言いたくない自分がいた。

「あそ。」

そう言って立ち去ろうとした彼に、

「…あ…あの、ちょっと待って!」

顔だけ振り向いた彼に、
「ご…ごめんなさい。…自分のいる場所がどの辺りかわからなくて…。」

気まずい気持ちで何とか言えた。

「ははは…やっぱり迷子だ。意地っ張りだな。」

見ず知らずの人間に″意地っ張り″だなんて言われたくない。

そう思ったのが顔に出たようで。

「勝ち気で意地っ張り。昔とちっとも変わんないね。もうちょっと素直になれば?」

更にムッとくる言葉に言い返そうと思ったが、昔の私を知っているような発言に眉根を寄せた。




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