万華鏡


でも気持ちが通じて良かった。今日ここに来て良かった。千尋に会えて良かった。

「嫌われたんじゃなくて…良かった。」

抱き合ったまま耳元で千尋が言った。

そうして私から離れると、

「それを聞いて安心した。」

そう言うと石段から立ち上がって、お尻についた土を払った。




「俺、これから行かなきゃいけないところがあるんだ。」

「もう行っちゃうの?またゆっくり話したいな。そうだ。お土産持って来たんだけど今から出かけるんじゃ渡せないね。」

「何?それ。」

「ふふ…千尋の好きな黄身餡のお饅頭。」

「わお!覚えてくれてたんだ。家寄って母さんに預けといてよ。さっきの通りを真っ直ぐ行くと、小さなお寺があるんだ。そこの和尚さんが家の場所知ってる。」

「わかった。あ、千尋の連絡先教えて?」

「あー、ごめん。今ケータイ持ってないんだ。今度は俺が理佳子に会いに行くよ。それからこれ…。」

差し出されたのは…万華鏡?




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