万華鏡


「これ知ってる?万華鏡。俺が作ったんだ。理佳子にあげる。」

「本当に?嬉しい。ありがとう。」

万華鏡を覗いてくるくる回すと、綺麗な模様が次から次へと現れては消えていく。

「うわあ、綺麗。千尋って昔から工作得意…。え?あれ、千尋?」

たった今ここにいたのに、気が付くとさっきの大通りの方へ向かって走っている。

慌てて追いかけたけど、私が大通りへ出た時にはもう随分先にいた。

「千尋――ー!ありがとう―――!!」

両手を大きく振り、できうる限りの大声で叫んだ。

千尋も走りながら振り向くと、右手を挙げて応えてくれた。

彼の姿が見えなくなるまで見送ると、教えてもらったお寺に向かうため、千尋が走って行った方向とは逆の方へ足を向けた。




< 72 / 108 >

この作品をシェア

pagetop