万華鏡
どうしていいのかわからず、私はただオロオロとするばかり。
丁度読経の終わった和尚さんが、くるりとリョウ君の方へ体ごと向きを変えた時……。
リョウ君の体から一筋の光のようなものが、スッと天井へ向かって一直線に昇って行くのが見えた。
あ……。
急にすすり泣く声が止み、見るとまだ涙の乾かないリョウ君がケロッとして、顔を真っ直ぐ上げて和尚さんの目を見ている。
「肩の張りがなくなりましたか?」
「はい。すっきりしました。」
「今、貴方が流した涙はご自分の意思ですか?」
「いいえ。泣きたいと思いませんでしたし、そもそも泣く理由がわかりません。」
「そうですね。説明しましょう。貴方に取り憑いた霊が、見ず知らずの自分をここに連れて来てくれた事に感謝して、貴方の体を借りて気持ちを伝えようと、嬉しくて泣いたのです。
今、貴方の体から離れました。だからもう何も心配はいりませんよ。」