おもちゃのユビワ
電車は拓巳の町に到着した。



「ここかー。拓兄ちゃんの住んでるとこって。」



都会ではないが、大学が近いだけあって若者の多い町であることが、一目で分かった。



駅前の通りは人が賑わっている。



「時間言っといたから兄貴そこらへんにいないか?」



改札を出ると、秀二は待合室にいる拓巳の姿を見つけた。



「あっ。」



「何、いた?」



「いや、待合室にはいないわ。外に出よう。」



秀二はナオを連れ、外に出た。



「まだみたいだな。遅ーな。」



秀二は咄嗟に嘘をついていた。兄貴は確かに待合室にいた。しかし、それをナオに見せる訳にはいかなかった。



兄貴の隣には、女の子が立っていた。しかも手をつないでいるかのように見えた。

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