失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
それにしてもまだ声を聞いていない。
「本当に申し訳ないです。シュークリームは後日買ってきます。ということでさようなら」
帰ろうとドアに向って歩きだそうとしたとき、
大翔がみんなに聞こえるように言った。
「こいつ、失恋したんだって」
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!
急いで大翔の口をふさぐ。
まだモゴモゴ言ってる。
「おいこらテメェ、海に沈めんぞ」
それでもモゴモゴ。
「そうなのか?」
なぜか口を開く陽。
「まぁ確かにそうだけど、関係ないじゃん」
ほっといてくれ。
すると陽はいきなり立ち上がってあたしに向って歩き出す。
静かな立ち振るまい。
無言のオーラ。
初めてこいつを怖いと思った。
陽が一歩動けば、あたしは一歩下がる。
それは壁という障害物により、あたしの足が止まってしまい……
――やばい
目の前にはイケメン。
だがしかし怖い。
後ろには壁。
だがしかし無害。