失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
「お前らに亜美は渡さない」
渡さないなんて偉そうな事を言う資格なんかないけれど、今はそんなことは言ってられない。
今、亜美を守れるのは自分しかいないのだ。
「……異常じゃねぇのか?」
瑠伊を黙らせたのは陽のその一言だった。
“異常”
言われなくても分かってる。
「お前、もしかして……」
「ちげえよ。あんたらが思ってるような感情とは違う」
恋ではないのだ。これは――
「異常なのは理解してるさ。でも、そうさせるものがあるから俺はいいの」
開き直っているともいう。
「お前といい、金井といい。一体亜美に何があるんだよ」
“金井”と聞いて、瑠伊の眉間に皺が寄る。
「金井武が来たのか?」
「あぁ、」
なるほど、ニュースソースはそこか。
金井武がここに来たということは……、そろそろか。
「……知りたいか?」
「あ?」
「本来は亜美のものである記憶を俺の口から」
この記憶は、本来は亜美のものだ。
けれど亜美はその記憶を、どこかに葬り去った。
そして、それを知っているのはごくわずかだ。