失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
亜美から消えた記憶



亜美の消えた記憶を語るには、2人が生まれた頃から話すのが一番いいだろう。


2人は17年前の4月に5分違いで生まれた。


周りから祝福され、可愛がられ。


厳しくもいろんな人から愛情を受けて育った。


その頃はまだ瑠伊が跡継ぎとして育てられていた。


昔から仲はよかったと思う。


家族仲もよく、亜美はとくに優しく笑顔が似合う母親に抱っこされるのが好きだった。



あったかくて、愛されてると実感できる母親の腕の中が大好きで。


でも瑠伊もせれが好きで、母の腕を何度も取り合った。


そのたびに母は笑ってこう言うんだ。



『順番よ』



って。


それを優しく、笑顔で言われたら、双子はじゃんけんをはじめる。


勝った方が先。


いつの間にか決まった二人のルール。



微笑ましい光景。


父はそれを優しい眼差しで見つめる。



大好きな妻、大切な子供、守るべき家族。




それが一時の幸せだと言わんばかりに、最高に幸せな瞬間だった。






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