失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
亜美が出ていった後、しばらくの間、誰も何も言わずドアを見つめていた。
「……行ったな」
一番最初に声を出したのは優真君だった。
その言葉に誰も返事はしなかったが、多分みんな同じような事を思っていたはずだ。
「……陽」
「ん?」
大雅も、陽もドアを見たまま。
「……お前、亜美のこと好きなわけ?」
「……何だよいきなり」
颯太も優真君も興味の無い風を装いながらも興味津々だ。
「俺はお前が亜美を抱き締めたのが意外でしかたねぇんだよ」
「……意外……ねぇ、……かもしんねぇ」
なんともはっきりしない返事。
「ちゃんと答えろよ」
そこでようやく大雅が陽の方を向いた。
だが、陽はドアを見つめたまま。
「好き……だよ。俺は亜美が好きだ。シュークリームより好きだ」
アホかといいたくなるような例えを持ってきたが、陽の場合、“シュークリームより”ってのは重要だ。
「そっか……」
大雅が言ったのはそれだけだった。
「あいつおもしろいよな。つまらない毎日を飽きないものにしてくれた亜美を俺は離したくない。まだ捕まえてもないけど」