失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
これは心の底から出る本当の言葉だった。
あの時、大翔にぶつかってなかったら、あたしはどうなっていたがわからない。
まぁ、そこまで重大ではないけれど、きっと多くの人に心配をかけていたに違いないし、今、こんなに楽しいと思うこともなかっただろう。
全部、思い返してみれば、大翔から始まっているのだ。
「兄さん、席を外して。ちょっと話があるから」
「それは……」
「すいません、私からもお願いします」
あたしの言葉に、嫌々彼は立ち去っていった。
「で、本当は何しに来たんだ?」
ばれてましたか。
「……学校、しばらく休んでるんだって?」
「まぁなってか、それ誰から聞いた?」
「忘れた!」
「お前な……」
呆れている。大翔が呆れている。
「あとさ、あんた気付かれてないと思ってるでしょ?」
「は?」
やっぱり、大翔は気付いてない。
みんなが気付いてることに気付いてない。
「みんな、知ってるの。だけど、何もしないのが一番だってわかってるから、誰も動かないの」
みんなが気付かないフリをしてる。
大翔のために。