失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
痛くて、痛くて――…
胸の痛みを無視できるほどあたしは大人じゃない。
「明日、ちゃんとバイバイしたいっ。みんなの記憶に残りたくないなんて嘘だよ。あたしのこと、忘れてほしくない……」
亜美は母の前で涙を流した。
返ってこない返事に耳を傾けるように、傍に寄り添うように……。
「自分で決めたはずなのに、おかしいよね……。こんなにも心が揺れるなんて」
こんなはずじゃなかった。
あの時、そう、あの時だ。
あたしが大翔にぶつかった時、陽の言葉に甘えず、シュークリームを弁償していれば、こんな辛い想いをしなくてもよかったんだ。
でも、あの日がなければあたしは陽に会うこともなく、恋もせず、武と違和感にまみれた結婚をするところだったんだ。
後悔をしたことは不思議と無かった。
彼らとの思い出は、あたしを何歩も大人にしてくれた。
「……もっといたかったな」
彼らと。