甘い君の唇にキス~恋の秘密は会議室で~
「もう事務所に戻らないと」
この時間を早く終わらせたかった。
このままこうしていると、いつか浩二のペースになってしまいそうだった。
浩二はチラリと腕時計に視線を走らせると小さく息を吐いた。
「今夜、部屋に行くよ」
「来ないで」
浩二はあたしの言葉が聞こえていないのか、何も答えずに非常階段で降りていった。
バタン
重たい扉が時間差で閉まると、あたしは足から力が抜けて崩れるようにその場に座り込んだ。
「何なのよ」
涙を手の甲で拭いながら、深く溜め息を吐く。
床にはあたしのバッグから飛び出した荷物が散乱していた。
恨めしく思いながら、手を伸ばしてそれらを拾い集める。
眼鏡とペンケースに携帯、そして、キーリング。
冷たいそれを握り締めた。
「合鍵、返してくれなかったね」