甘い君の唇にキス~恋の秘密は会議室で~
  

「もう事務所に戻らないと」

この時間を早く終わらせたかった。

このままこうしていると、いつか浩二のペースになってしまいそうだった。

浩二はチラリと腕時計に視線を走らせると小さく息を吐いた。


「今夜、部屋に行くよ」

「来ないで」


浩二はあたしの言葉が聞こえていないのか、何も答えずに非常階段で降りていった。

バタン

重たい扉が時間差で閉まると、あたしは足から力が抜けて崩れるようにその場に座り込んだ。


「何なのよ」

涙を手の甲で拭いながら、深く溜め息を吐く。

床にはあたしのバッグから飛び出した荷物が散乱していた。

恨めしく思いながら、手を伸ばしてそれらを拾い集める。

眼鏡とペンケースに携帯、そして、キーリング。

冷たいそれを握り締めた。


「合鍵、返してくれなかったね」


< 48 / 134 >

この作品をシェア

pagetop