奈那子が死んだ


 「和くん、ありがとう」


 職員室の前で弥英ちゃんはぶんぶんと手を振った。

 そんな弥英ちゃんが面白くて俺も少しだけ手を挙げた。


 時間を見るといつもの出勤時間になっていた。

 笹川学園を出て、急ぎ足で駅に向かう。

 奈那子さんの葬式とかで仕事を休んでいたから、仕事たまってんだろうなあ。


 「ま、がんばりますかーい」


 ぐぐっと伸びをすると、少し気分が晴れた。


 ゆらゆらといつもの電車に揺られる。

 通勤ラッシュのピークなので人がごった返している。

 それもいつものことなので慣れているが、やはり苦しい。



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