The Flute of Ico‐イコの笛‐
「ユーノ、よく使えた」
それは主人たる言葉だ。
乳母は自分の真名を呼んだ、小さな小さな少女を見た。
きっとあと10年もすれば、美しく聡明で立派な女性になるであろう。
自分はその成長を最後まで傍で見守りたかった。
しかし今はもう、それは望まれない。
「さあ、エルシス様!」
お行きください、と言うと共に、その小さな身体は地を蹴って駆けだした。乳母はその姿を確認すると、迫ってくる敵兵を見据えた。
「ここから先は行かせません!」
乳母は両手を広げ、小さな少女を思い、小さな少女の盾となった。