小鳥と恋愛小説家
前のめりにこけそうになって、何とか踏みとどまる。
「…………っ。」
「…………。」
振り返ると、行きなさいよ!って言ってるような顔したツバサさんがいた。
そのまま前に向き直ると、少し早足で前に進む。
住宅街の角を曲がろうとしてハッとした。
それからまた振り返って、戻ってくるあたしに怪訝な顔をするツバサさんに向かって……大きく息を吸い込むと
「ツバサさーーんっ!!
あたし…っ、ツバサさんに嫌われてるけど、
あたしはツバサさん好きだよーーっ!!
綾瀬くんのこともツバサさんのことも怒ったりなんてしてないからねーーー!!!
ありがとうーーっ!!」
「…………!」
手をぶんぶん振って、ぽかんとするツバサさんにそれだけ叫んでまたくるっと前を向いて今度こそ走り出した。
どうしても、そう、伝えたかった。
あたしはツバサさんを嫌いにはなれないよ。
カナくんが大好きで、堪らない気持ちはよくわかるんだ。
文句を言いつつ世話をやいてくれたさっきのツバサさんはお姉さんみたいだった。
ツバサさんは、優しい人だよ………。
出来たら
友達になれたらいいのにな…………。
「わざわざ………それだけの為に戻ってくんじゃないわよ………。
ほんと、お人好し!
………あんたみたいなやつ
そうそう嫌われたりしないわよ………。」
もう見えないあたしに背を向けてツバサさんはつぶやくようにそう言った。