眠れぬ夜は君のせい
本気だ。

衛藤さんは、本気だ。

「――衛藤さん…」

唇をついて出てきたのは、彼の名前。

「名前じゃ、ないんだ…」

衛藤さんが寂しそうに呟く。

私は衛藤さんの体温がただ心地よくて、聞こえなかった。

甘い香りと衛藤さんの体温。

うっかりしたら、目を閉じてしまいそう。

時間が過ぎて行くまま、私たちはそうしていた。

抵抗しようなんて思わない。

離そうなんて思わない。

ただずっと、そうしていたかった。

衛藤さんを感じていたかった。
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