眠れぬ夜は君のせい
本当は、わたしの方だったのかも知れない。

「藍子…」

岳の呼ぶ声が、聞こえる。

触れる指先は、どこかあいつを思い出させた。

自分からうなずいておいて、そんなことを思うなんて。

まだ、あいつに未練があるらしい。

ちょっと、笑える。

抱かれているのは岳で、思っているのはあいつって。

バランスが悪過ぎだ。

組み合わせがおかし過ぎだ。

けどやっぱり、重ねてしまう。

違うはずなのに。

あいつはあいつで、岳は岳。

何やっているのだろう。

あっという間に、時間が経つ。
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