眠れぬ夜は君のせい
「谷田部」

服を着替えると、朝食の用意をしている谷田部に声をかけた。

「何でしょう?」

「あげはを見なかったか?」

俺の質問に、谷田部は不思議そうな顔をした。

「誰ですか?」

谷田部は首を傾げる。

「誰ですかって、ここで働いていた女がいただろ。

俺が倒れてたからって言って運んできて」

「はて…知りませんね」

あげはを知らない、だと?

「正宗様、寝ぼけていらっしゃるのですか?」

そう聞いてきた彼に、俺は首を横に振った。
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