魔王様はボク

ああ、でもボクが魔族ならそうはならないのかな。

そんなことをぼんやり考えてみたが、意味のなさに気づいてやめた。
考えたって分かるものでもないし。


「それじゃあ、今度こそバイバイにゃ。」


猫はそう言うと、お湯の中にすうっと入っていった。
お湯には波紋が広がり、猫が完全に入った瞬間にぽちゃんと音がしたがそれだけ。
あとは静寂だけが残った。

前と同じくして消えた猫見終えた後、ボクは前と同じく窓を閉めて湯舟に浸かった。

結局視力はそのままなんだけど、まさか忘れてるのかな。

そんなことを考えながら時間を見送った後、ボクはお風呂から上がった。

体から落ちる水滴を拭いた後、服を着ようとしたところで気づいたが、ボクの服、つまり学ランはなくなっていた。
代わりにランニングシャツのような白い服と黒いジャージのようなズボン、それに下着が置いてあった。
当然ボクが持って来たものではない。

これ着ろってことだろうな。
洗ってくれてたりするんだろうか。
それとも盗み。
まさかね。

ボクはそれらを着てみた。
サイズはピッタリ。
凄いな。

誰が用意したとか、何故違うのかとか特に考えない。
というか眠くて考えられない。

ボクは髪に残る水分をタオルで拭きつつ、ふと鏡を見た。

青い、マリンブルーの二つの瞳がこちらを見ている。
あはっ、当たり前か。

その時、右目に鋭い痛みが走った。


「…っ。」


咄嗟に両手を当てる。

ぱさりと音をたてて、タオルが床に落ちた。

すぐに痛みは消え、ボクは手を外して目を開いた。

違和感。

足りない。

何が?

ああ、そうか視力が。

ボクの右目の視力は消えている。
周りを見渡して見るが、視界が狭まったのがすぐに分かる。

忘れなかったんだな猫。
きちんと貰っていったみたいだ。

特に不便ではないだろうから、まあいい。
とは言えないのが人の不思議。
自分でいいと言ったくせに、いざ無くなると少し惜しいと感じる。
そんなものなんだけどさ。

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