ありのまま、愛すること。
その命日をはさんでの約1年間、肉体的に言えば、これまでの半生で最も自分を酷使した日々でした。

父親は、「息子は一体、どうなるんだろう」という思いで心配して見守ってくれていた。

社長になるといって、トラックの運転手を朝から晩まで一心不乱にやっているわけですから。

月に1、2度あるかないかの休みの日には、会って話を聞いてくれました。

それ以上に、いっしょに暮らしていた祖母のほうに、私は心配をかけました。

朝、大きなおにぎりをいっぱいつくってくれて、送り出してくれるんですが、何回も、泣いて止められました。

「行かないで。こんなことつづけたら死んでしまうから、後生だから行かないで」

ほとんど寝ないで仕事に向かうのを、毎日見ているんです。

人間としての許容量ギリギリのところにいるというのは、見ていればわかったでしょう。

痩せて、頬はげっそりとこけて、挙句の果てに救急車で運ばれたとなれば、祖母は泣いて止めますよね。

そのすがる手を振り切って、私はフラフラとした足取りを正して、トラックに乗って出ていくんです。

それは私も切ない気持ちです。

でも、行かなければいけない。

「おばあちゃん、もう少しだから、もう少しで、僕が決めた300万円を、貯金し終わるから。うん、僕は死なないから─」

孫がどれだけの苦労をしているか、それを見ていた祖母は、どれだけの思いで毎日、おにぎりをつくってくれていたのか。

あのときの祖母を思うと、いまも涙が出る思いなんです。

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