ありのまま、愛すること。
「あなたは、自分の本当の子どもをB型肝炎の子どもたちといっしょに、あの家で生活させることができますか?」

私は事務局長にそう尋ねました。

日本人スタッフの顔、そしてそのご両親の顔が、まざまざと目に浮かびます。

「あの二人を受け入れてくれる病院、または施設を探しましょう。お金はいくらかかってもいいですから」

そう伝えたものの、受け入れてくれる施設は本当にありませんでした。

そこで、元の家に帰すかどうかという話が持ち上がりました。

一人はおじさん、おばさんの住む家へ。一人はお寺へ帰ることになります。

養育費を渡して、病院にも通わせれば、親の役目が果たせる、そう、一瞬考えました。

そのとき、気の弱そうなおじさんと、鬼のような、意地悪そうなおばさんの顔が思い浮かびました。

そして何より、あのおばさんと生活していた時の、あの子の、心の底から脅え、暗く沈んだ表情が、蘇ってきたのです。

あの子にとって、おじさんとおばさんの家は地獄だった。

そこから天国を見せておいて、また地獄に帰すのか。

渡す養育費もこの子のために使われることもないだろう。

子どもたちの選択肢が、「死」か「家」かだった。

経営においてでさえ、こんなに悩んだことがないほどに、このときの私は、悩みに悩みました。

そして、彼らのためだけの家をつくろうと、決意したのです。

それから入園条件を決めました。

エイズ・B型肝炎の検査を入園時に受けてもらうことです。

その結果、陽性反応が出た児童については、入園を断ろうという結論に至ったのです。


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