ありのまま、愛すること。
それから、被災地の方々とお話ししているとき、こんなことをうかがいました。

ある方は、
「家を流されたけれど、家族は無事だったから、よかった」
こうお話しになりました。

また別の方は、
「子どもが流されてしまったんです。でも、1カ月して、遺体が見つかった。だからよかった……」
と涙ながらに話されました。

物事の「よかった」「よくなかった」というのは、相対して思うことなのだなと、それを聞いて感じたんです。

家があるかないかだったら、あるほうがいいに決まっている。

でも、流されたけれど、家族がみんな助かったら、「よかった」と言えるんです。

お子さんを亡くしている方がですよ。ご遺体が見つかったから「本当によかった」と涙しているんです。

幸福感というのは、相対的に感じるものだということです。

人生というのは、起きてしまったことに対して、すべて受け入れるなかで、前向きに生きる。

ないものに対して不満を言うのではなく、あるものに対して感謝しながら生きる。

それが大事であり、そこから前に進んでいく、つまり、そこをスタート地点にしなければいけないということなんです。

被災地の方々はいま、そうして生きていこうとされているんです。

そして、被災地以外に住んでいる私たちは、被災された方々に対してなにかをするという責任があるということも、考えなければならない。

私もそれを、これからも真っ先に果たしていかなければと思っています。
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