ありのまま、愛すること。
もう一人は、サイハーという男の子です。

彼は勉強が大嫌いで、将来の夢は絵描き。

なのに、絵の勉強もせず、描こうとしません。

ありがちな中学3年生の男の子と言えばその通りなのですが、ここはカンボジアの孤児院。

日本の裕福な家庭と違って、遊ばせるために高校に行かせる余裕など、家族にはありません。

彼の職探しをしようと思いましたが、中卒で受け入れてくれる工場や会社は皆無。

中学卒業後、職業訓練校に入って手に職をつけてもらおうにも、就職は難しいということがわかりました。それもそのはず、この国の公表失業率は40%なのです。

潜在的なものも含めると、失業率は60%を超えるそうですから、カンボジアという国には働く場所がないと言えるでしょう。

また、サイハーの仕事探しを始めたことで、カンボジアにおける人身売買がますます激しくなったとの報告を聞くこととなりました。

この孤児院を始めたきっかけは、「売られていく子どもたちを一人でも助けたい」という思いでした。

生活のために農地を手放す農家が増えたことで、結果一時的に増えた収入もおのずと止まり、最後は子どもを売る。

子どもは5歳から売られるそうです。

現地調査も行いましたが、何度見知っても、いたたまれない気持ちになります。
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