ありのまま、愛すること。
 でも、やっぱり、自分と重ねてしまいました。お母さんが死んでしまったあの日のことを思い出し、その悲しみを思うといたたまれなくなり、この子の悲しみが薄れていくように、時間が早く経ってほしいと、祈ることしかできませんでした。


 お母さん。私は今、51歳です。

 思えば、今の私と同じ、51歳のときに、お父さんは愛する伴侶を亡くし、会社を清算し、多額の借金を抱え、小学生の私と中学生の姉、そしておばあちゃんの3人を養うために、それまで経験したことのない営業の仕事を朝早くから夜遅くまで続け、文字通り、働きづめの毎日でした。

 あのときのお父さんの後ろ姿を見て、私は経営者としての生き方を教わり、父親としての責任とはいかなるものであるかを、教わったような気がしています。

 私は家族を持ったとき、自分の二人の子どもと接する時間が、とても幸せでした。

 長男が10歳のときのことを振り返ると、私は二人の息子との勉強会の時間を設け、精一杯彼らと向き合い、その勉強会が終わればいっしょに遊び、食事をするときも私の両方の膝の上に二人が座り、寝るときまでも片手を長男が、片手を次男が握って寝てくれていたものです。
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