ありのまま、愛すること。
いつものように二人だけだったら、母は私を必ず抱きしめていてくれたはず。ほっぺに必ず、キスしてくれていたはず。

でも監督がいたから、さすがに二人、照れくさくて向かい合うだけだった。

そんなとき、母はこう言って私を呼び寄せました。

「美樹さん、こっちに来なさい。お顔が汚れている」

ハンカチにつばをつけて、母は私の顔を拭いてくれた。

それでも私は照れくさくて、

「うるさいなあ~」

なんて言っていたのですが、帰り際、監督はこう言いました。

「お母さん、お前のこと本当に好きなんだなぁ。お前の顔、汚れてなんかなかったよ」
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