ありのまま、愛すること。
そこから1日3時間、受験勉強をしました。

塾や予備校には通わず、東京六大学に通っている先輩をつかまえて、推薦してくれる本のなかで共通する問題から勉強したのです。

明治大学に合格すると、担任に呼び出され、まずは「おめでとう」と祝福されたあと、こう言われました。

「あれだけしか勉強しないで、よく受かったな。お前は1年浪人すれば、絶対に東大に受かるぞ。将来、お前は官僚とか、世の中を動かす人間になる。俺が応援してやるから」

もともと、2年生になるときのクラス編成で、私は授業態度などの素行の悪さから、ほかの教師に腫れもの扱いされていたようで、それを、

「お前、引き取り手がいないから、俺が拾ってやったんだよ、だからお前、俺の言うこと聞けよ」

と言ってくれたのが、この先生。いまでもつきあいのある恩師です。

しかしながら、担任にそこまで進言されても、わが家には浪人する余裕は当然ありませんでした。

父親には「浪人は絶対に無理だ。そのかわり、私立でもいい。入学金と授業料は払ってやるから、生活費は自分で稼ぎなさい」という条件を出されていました。

父の借金返済の苦労は見てきているから、それだけでも大変ありがたかった。

だから、浪人はもとより、選択肢になかったのです。
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