山荒の鳴く夜
人外がたじろぐ。

数多の命を愉悦半分に奪い、敢えて幕府方と志士の争乱の場に身を躍らせ、血の匂いと殺戮を満喫してきた妖怪変化が畏怖する。

死んだ筈の天才剣士に。

唯一自らに『死』の一文字を意識させる人間に。

屈辱だった。

畏怖とは、人外が人間どもに対して感じさせる感情。

決して人外が感じるべき感情ではない!

ましてや一度は死したとはいえ、人間如きに対して!

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