午睡は香を纏いて
美味しかったと言ってくれれば、冷ましてから渡すつもりだったし。
ぷいと顔を逸らすと、小さな舌打ちが聞こえた。


「おはよう。いただきます、ごちそうさま。旨かった、多分だけど」


不機嫌そうに捲くし立てられた。


「はい、お粗末さまでした。って、多分って何ですかね?」

「いや、味まで把握していなかった」


つら、と言うカインに腹が立つ。美味しくて完食したんじゃないんかい。


「もういい。明日からはパン一切れしか持って来ない。
お茶もただの水にする」

「うえ。俺の体を壊す気か」

肩を竦めてカインはカップにふうふうと息を吹きかけ、慎重に口に運んだ。

「舌、火傷したじゃないか。カサネと違って繊細なんだぞ、俺は」
「ねえ、今日は外で勉強しよう」


構わず言ったあたしに、カインがため息をついた。


「了解。机と椅子出しといて。俺、ここ片付けるから」
「はあい」


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