午睡は香を纏いて
「美味しかった? カイン」

「お茶」

「……はい、お茶ドウゾ」


カップを机に置くと、す、と手が伸びて、それを口に運んだ。
ごくりと飲んで、次にげっほげっほとむせ返った。


「あっつ! カサネ、これ熱いっ」

「あ、やっとこっち見た。食事するときくらい、食事だけに向き合ったほうがいいよ」


カインに渡したお茶は、ぐらぐらと煮立ったお湯で淹れたのだ。
不用意に口にできる温度ではない。
目尻に涙を浮かべて、恨めしそうにあたしを見るカインに、ふん、と胸を逸らして見せた。


「せっかく作ったのに、無反応って酷くない? それに、おはよう、とかいただきます、とかもないし」

「だからって熱湯か」

「熱いよ、って言おうとしたらもう口つけてたんだもん」


< 112 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop