午睡は香を纏いて
母屋に机と椅子があるので取りに行く。
カインのいる離れの前に、机と椅子を二脚並べたところで、カインがのそのそと出てきた。
大きく伸びをして、それから眩しそうに眉を顰めた。


「室内でよくないか?」

「本に潰されそうで嫌。それに、カインはちょっと日の光を浴びたほうがいいよ」

「たまに浴びてるから、それで十分」


とっつきにくさを感じた最初が嘘のように、カインと随分仲良くなれたと思う。

それもこれも、この国についての知識がゼロのあたしに、カインが授業をしてくれると言ってくれたからだろう。
毎日数時間、先生と生徒として過ごしているうちに、自然と会話も増え、今は軽口も交わせるようになった。

カインは相変わらず無愛想だし、そっけないけど、別にこちらを嫌っているわけではないと分かればそんなに怖くない。


「ええと、今日はヘルベナ神殿について説明しようか」

「ヘルベナ神殿って、確かサラやカインがいた神殿、だよね。今もリレトがいるっていう」

「ああ。大神パヴェヌを祭ってる、国内最大の神殿だ。まずは神殿内の官位について説明しようか」


カインは机の上に一枚の紙を広げた。

そこには色々書かれているけれど、あたしはそれを理解できない。
あたしが身につけているこの珠は言葉の不自由はなくしてくれたけど、文字を読むことまではできないのだ。




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