午睡は香を纏いて
それでもカインは、いずれ理解できるようになるだろうと言って、こうして書物を用いることが多い。


「神殿に入るには、『力の発露』が出来なくてはいけない。
この国では、生後七日目に、パヴェヌを祭った礼拝所で洗礼を受けることになっている。
その際にある『検査』をし、それによって巫力を確認された者だけが、神殿で仕えることを許されるんだ」

「検査って?」


訊くと、カインは小瓶を取り出した。
カインの手の平に収まるそれには、きらきらした透明な液体が入っていた。


「カサネ、手を出して」

言われるままに両手を差し出すと、瓶の口を開けたカインは中身をあたしの右手に垂らした。

さらさらとした水のような液体は、手に触れた途端、とろみを帯びた。


「触ってみなよ」


言われるままに左の人差し指でつついてみると、粘土のようにぐにゃりと指先を包んだ。


「うわ。すごい、何これ」

「前に一度説明した、水宝珠ってやつだ。巫力のある人間が触ると、こうして固体になる。力がなければ、指の隙間から流れ落ちていくんだ、水のように」


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