午睡は香を纏いて
男は胸元から、銀鎖のネックレスを引っ張りだした。
その先には、ほんのりと光を放つ小さな赤い珠。

宝石、だろうか。
発光する宝石なんて聞いたことないけど。

柔らかな光は、男が手の内に握り締めた途端、まばゆいばかりの光の海へと姿を変えた。
拳の隙間から零れるそれに、思わず悲鳴をあげた。
こんな宝石、あるはずがない。
一体これは何なの?


「カイン、帰る。サラと共に」


握った球に話しかけるように男が呟いて、


「サラ、行くぞ?」


とあたしの腕を掴んだ。


「ま、待って、あた」

『レジェス、離すなよ』

「死んでも」


これ以上はないと思っていた光が、益々勢いを増した。
暴力的なまでの光に、堪らず瞼をぎゅ、と閉じた。


「な、何よう、これは!?」

「まぶしい! 目が痛い」


悲鳴まじりの声がする。彼女たちもあたしと同様、このまぶしさにやられているらしい。


『転送する』

「どうぞ」

「あの行くってどこっ!?」



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