午睡は香を纏いて
「嫌とかじゃなくて! そうじゃなくってっ」

「じゃあ、何で離れていったんだ?」
「え」


心底不思議そうに聞かれて、口ごもった。

何で、って。それは、間近で顔を見た途端、カインを意識してしまった、んです。
でもそんなこと口が裂けても言えない。

『異性』として見てしまった、とかバレたら消滅してしまいそうなくらいだ。

今までこの世界について覚えるのに必死だったし、命珠のことだってあるし、そんな方面にまで頭が回らなかった。
そりゃあ、かっこいいなー、綺麗だなー、程度のことは思ったりはしてたけど、
あまりにも相手のレベルが高すぎて、そういう対象に見られなかった。
年上の、大人ということもあるし、自分の相手として、なんて考えも至らなかったのだ。

対象外のままでいたほうよかったのに、どうして余計なことをする!
気付いてしまった以上、あたしの内面に弊害が起きてしまうかもしれないじゃないか。

このことは、絶対にカインに気付かれたくない。
カインだって、あたしなんて対象外のはずだ。
それなのにあたしが変な目で見てるなんて分かったら、何て思う?

困る、これ一択しかないだろう。

結果、カインとの間に変な空気が生まれてしまうかもしれないし、避けられたりなんてことにもなりかねない。
そんなの、嫌だ。
できることなら、数刻前までの関係を続けたい。


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