午睡は香を纏いて
「ええと、ほら、我に返ったら気恥ずかしかったと言うか、その」


えへへ、と曖昧に笑ってみた。
恥ずかしかったのは本当だし、嘘は言ってない。

なのに、何でそんなに不愉快そうな顔をするわけ!?

カインの眉間にはくっきりとシワが刻まれていた。


「嫌じゃないなら、そんなに勢いよく逃げなくてもよかったよな? 
結構傷つく。というか、傷ついた」


声も不機嫌そうに低い。
ああ、完全にお怒りのようだ。
あたし、そんなに酷い逃げ方をしただろうか。


「えと、だって、ほら、あの」
「カサネは本当は俺が嫌いなのか?」


ずい、とカインが歩み寄ってきた。
と、のけぞる猶予もなく腕を掴まれて、強く引き寄せられる。
室内で本ばかり読んでいるから、デスクワーク派なのかと勝手に思っていた。
けれどやっぱりカインは男の人で、あたしは至極あっさりと、カインの胸の中に再び納まってしまった。

意外に、と言ったら失礼なのだろうけど、カインの腕は逞しかった。
それは苦しいくらいにあたしを抱きしめて、お陰で衣服の下にも締まった体があるのが分かった。

ああそういえば、あたしとレジィを助けに来てくれた時、追っ手のリーダーを矢で射た人がいたっけ。
あれが誰だったのか今まで考えもしなかったけど、カインだったのかもしれない。
この体つきに加え、術も使うカインなら、遠く離れた相手に弓を引くことくらい、造作もないのでは。

って! そんなこと考えてる状況じゃない!


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