午睡は香を纏いて
「あの? あの、カインさんっ?」

「嫌いなのかと聞いてるんだけど」


耳元にそっと声を寄せられ、ぞくりとした。
耳に息が。耳に息が!



「いやだから嫌いとかそういうんじゃなくて! と、とりあえずからかうの、止めてっ」


これ以上されたら心臓発作を起こしかねない。
わたわたとカインの腕の中でもがくと、きゅう、と益々腕に力が込められる。


「からかってない。俺にこうされるの、嫌?」


カインのことが嫌いなはずがない。
嫌だったら毎日あんなに時間を共にしていない。

それくらい、言わなくてもわかりそうなもんじゃないか。


「嫌なんてことな……」


言いかけて、はた、と気付く。
でも、今は『こうされるの』が、嫌じゃないかと聞かれなかった?
ここでの回答は、間違った方向に行ってしまう。

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