午睡は香を纏いて
慌てて口を噤んだ瞬間、はぷ、と音を立てて、カインはあたしの耳輪に柔らかく噛み付いた。


「…………っ!?」
 

驚きを通り越したら何という感情になるんだろう。
耳から産まれた感情は全身に電気のように走って、音のない悲鳴となって溢れた。

通電した神経の全てが、カインの口中にちょっぴり取り込まれた耳の端に集中する。
カインの歯列すら、感じ取れそうだ。


「……返事しろ。嫌? カサネ」

囁きがあたしの鼓膜を揺らす。
吐息までも聞き取れて、それは新たな電気に変わって体を走った。

耳、敏感すぎる。
神経が外に飛び出してるんじゃ……って、もしかして耳、噛み切られてる?
 
痛くはないけど、じんじん痺れて、痺れ過ぎたせいか感覚がなくなってきた。
そうだ、なくなってるから感覚がないのか。

食べられたんだ、あたしの耳。

自分の耳の上部が、カインの歯型に沿って千切れているイメージが頭の中をぐるぐる回った。


「みみ! みみ!」
「何?」
「あたしの耳、ある!?」


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