午睡は香を纏いて
「分かってるって。悪かった」

ぶう、と膨れたあたしの頬に手を添えたまま、カインは言った。
きり、と顔つきを改める。


「カサネに拒否されたのが、なんとなく嫌だったんだ。俺を嫌ってないことくらいは、理解してる」


存外、素直。
だけど、それならあんなことしなくてもいいじゃないか。
意地悪にしても程がある。


「それより、カサネ。ちゃんと飯食ってる?」

「は? 食べてるけど、何で?」

「いや、何というか、凹凸がなかったから。平野?」

「…………っ!?」


ぶん殴ってもいいだろうか、こいつ。
つらっとしているカインを睨んだ。
視線で人を燃やせるとしたら、今ならいける。


「いや別に悪いとは言ってないからそんな目で見るなよ。サラにはそういう脂肪があったな、と思ったまでで」

本人は良かれと思って言い足したつもりらしい。が、火にガソリンを撒いたようなものだ。


「本当に、他意はない。事実を述べたに過ぎない」


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