午睡は香を纏いて
そうですか、サラは肉感的で、あたしは貧相ですか。これで何人目だ。あたしを残念そうに扱ったのは。
ぱしん、とカインの手を払った。
数歩後ずさって、距離を取る。


「……カインは、サラの方がよかったんでしょ? でも、あたしは『こう』なんだから仕方ないじゃない」


ふつふつと湧いた感情から発した声は、少し震えていた。


「いや、そんなこと」

「そんなこと、あるでしょ? だって話に聞くサラとあたしは大違いだもんね?
カインもあたしを見て、がっかりしたんでしょう?」


みんな、サラとあたしの違いに落胆しているんじゃないか?
日を追うごとに大きく育っていった、隠した思いがあった。

それが今、カインの言葉に反応し、表面にむっくりと姿を現した。

あたしは、崇められる美しい巫女姫になんてなれない。盗賊を助けて逃げのびるような行動力のある女性でもない。

ただの、普通の役立たずの子だ。

オルガで暮らし、みんなが優しくしてくれる度に、申し訳なさを感じていた。
サラに遠く及ばないあたしを大切にすることを、誰も疑問に思っていないのだろうか。

カインやレジィが『カサネはサラだ』と言ったから、信じてくれているのかもしれないけど、でも本心は……?  

しかし、そんなこと口には出来なかった。皆を困らせるのも嫌だったし、何よりそれを肯定されるのが怖かった。

自分の存在を否定されるのは、もうこりごりだったから。

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